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フェイク

「さとりちゃんさ、オレとつきあわない?」
「え?あの、えっと、食事ですか?」
「ぼけるね〜、オレの彼女になってってこと。だめかな?この間もカレシ居ないっていってたよね?」
目の前で真っ赤になりながら告ってくれてるのは、現在収録が終わったばかりの歌番組のADの住田くんだった。短く刈り上げた髪が爽やかな体育会系の青年だ。おそらく1つぐらい下だろうか?
「えっと、居ないんですけども...」
表面上は...居ないことになってます。
でもいるんです。あれをカレシと言うならば、あたしには既に3年半近くも付き合ってる(だろうと思うわれる)男がいます。
決して口外できないですし、一緒に居るところを見られてもイケナイので、ひたすら通いのお手伝いさんのようですが...
もっとも、昼間でもカレがいなくてもカレの部屋に入り、掃除と洗濯、食事の準備と、まるで家政婦みたいなことやってますけど、それなりにあっちのほうもあるってことは、やはりカレシだと思っていてもいいのでしょうか?
「じゃあ、付き合ってよ?オレさとりちゃんのこと、すっごく可愛いなって...好きになっちゃったんだ。」
ああ、いいわね、この好きって言葉!すごくストレートで、爽やかで...
「あ、でもね...」
「決まり、な?じゃあ、早速今晩飯食いに行こうよ?」
どうしよう?一応カレシのいる身で、二股はダメだよね?向こうの二股はOKさせられてるようなものだけど。でも、今日はたしか...
「おい、サト!今日の打ち上げは12時にいつもの店だからな。」
必死になってあたしを誘っていたADの住田くんが一瞬ビビる。
「あ、天野さんっ!」
そこに現れたのは紛れもなくアイドル天野雅弘だった。男性アイドル製造会社と名高い芸能事務所<J&M>に所属している五人のメンバーからなるアイドルユニット「ギャラクシー」のリーダーだ。
およそ男性アイドルの分野では国内最大、他の追随を絶対に許さないその事務所の中でも彼らは頂点にいると言ってもいい。既に落ち着いた年齢の彼らだが、それぞれがドラマに司会にと大活躍中だ。緋川拓海はその押しも押されぬ絶対的な人気は主演ドラマの視聴率で推し量れる。最近は男の魅力を存分に身につけ、相変わらずの人気振りはすごいものだ。草原篤志のドラマでの演技力はJ&Mを飛び抜けて、色んな監督からも引っ張りだこな個性派俳優だ。上瀬士郎も甘いマスクと無口なキャラで色んなドラマにひっぱりだこだった。賀沢東吾も先日は来年度の大河ドラマの主演を勝ち取って、上り調子だ。
そのリーダを勤める天野も、好調な司会業だけでなく、重いテーマの名作のドラマリメイクも続き、多種多様な活躍振りを見せている。
目の前のあたしがカレ専属のスタイリストだったことを思い出した住田くんは、慌てて頭を下げて控え室を飛び出す。ここはもちろん天野さんの控え室なのだから。
カレの発するオーラは、普段司会業をやってるときには出てこない。時折、シリアスなドラマで神経を張りつめているときや、機嫌の悪いときに発せられるものである。ちなみに今、非常に機嫌の悪いオーラが出ている。そう、担当して5年目、そのぐらいは判るようになりました。
そして、その怒りがあたしに向かってることも、付き合って3年以上になるあたしには判りすぎるぐらいわかってしまうんですってば!!
そうなんです、目の前にいる天野雅弘、カレがあたしのカレシ(らしい)...

「いい度胸だな、あのADと付き合うのか?」
「そ、そんな...付き合いませんってば!!ただ、カレシが居るって言っちゃいけないと思って...」
むうっとした顔つきであたしを睨む。何よ、睨んだって怖くないわよ、天野さんだって、この間共演の女優さんと食事に行ったじゃない?
あたしには<メシいらね>の一言メールだったじゃないの!!
「おまえ、今日の打ち上げ、さっさと引けて先にオレの部屋でまってろよな?」
「ええっ、あたし楽しみにしてたのにっ?」
「メシ炊いとけよ、オレ帰ったら茶漬け食いてえもん。」
うう...どうせあたしは飯炊き女ですよっ!

いつだってそう。
食事の用意して、身の回りの世話焼いて、「好きだ」なんて言葉聞いたこともない。ましてや最上級の「愛してる」なんかも...
先日ドラマで聞いた天野さんの台詞、「好きなんだ!愛してる...」綺麗な女優さんに向けられたその言葉、思わずDVDで繰り返しみちゃったわよっ!
うちにはDVDレコーダーなんてないから、天野さんのところで...自分の番組なんか録らないのでいつもあたしが勝手に録画設定してるんだけど、それを見てたんだけどね。あんな切なくて艶っぽい表情で言ってもらえてよかったですね、共演者さん。あたしは、一度も言われたことありません!

はあ...3年半、あたし何してたんだろう?

生来めんどくさがりやの天野さんの身の回りの世話を焼く都合のいい女?口では逆らってるけど、身体が逆らえない...
だって、天野さんとのえっちはなんていうか、逆らえなくなるって感じ?いつも強引だし、避妊がめんどくさいからってあたしにピル飲むように命令するようなヤツだから。まあ、おかげで、酷かった生理痛からは解放されたけどね。だから、こんな言い方したらなんだけど、いつでも、どこでも、好き放題されてる気がします...
みなさん、ハイテンションな司会やってる天野さんにはくれぐれも騙されないで!


「あ、おかえりなさい。」
一応そう声かけるけれども、天野さんが自分の部屋に帰ってくるのにインターホンを鳴らすでもなく、「ただいま」と声を出すわけでもなく...
そのままバスルームにはいっていく。おそらくカラスの行水、お湯を溜めていたって、長く浸かったことがない。
「腹減った。」
テーブルに座る天野さんの前にお茶漬セットを置く。
今日のは鮭を焼いてほぐした身を載せた鮭茶漬け。海苔とかわさびにもこだわった一品だよ?漬け物も、ちゃんと自家製なんだから...ここに置いといたら臭いって言われるから自分のアパートで漬けては、いい頃にコチラに持ち込むんだ。
「おう、ほんとにうめえなぁ...サト、おまえいつでも嫁に行けるぞ?」
おいしいって言葉だけは、最初からずっと言ってくれている。だから作り続けられるんだけれどもね。でもね、その台詞って...あたしにどこかに嫁に行けってこと?そう思うなら、こういうコトしないでください...あなたのせいで傷物じゃないですか?


「やっ、まだ...洗い物が...」
深夜のスポーツダイジェストが終わったと思ったらこれだ。
今日はジャイアントがぼろ負けしたのですこぶる機嫌が悪いらしい。こんな時は、あたしに触れてくる指さえも乱暴になる...
「あん?ここは立ってるぞ?」
台所で立ってるあたしに後ろから覆い被さるように絡みつく腕...
Tシャツの下から潜り込んできた指が下着を押しのけて胸の先を強く摘んで潰す。
「やぁ、あっ...はぁんっ...」
おしりに当たる硬いものが天野さんの興奮度を伝えてくる。下着の中に手が入り込んで、くちゅくちゅといやらしい音を立てるあたしに満足したのか、嬉しそうに囁いてくる。
「何だ、もうその気じゃん?欲しいんならおねだりしてみろよ?ん?」
あたしが何度も首を振るとその上の敏感な真珠に泥濘を塗りつけて、はじきはじめる。
「いっ...いやぁあ...っくふぅ...ん」
「ADのあの坊やは年下だろ?あんなヤツにオマエのからだ喜ばすこと出来るんかな?どっちかっていうと、優しくされるより、乱暴にされる方が感じるおまえなのにさ。」
首筋に熱い息、キスもまだなのに...あたしの身体は何度も爪の先で引っかかれて、びくびくと昇り詰めはじめる。
「ひゃあっんっダメっもう...キツくしないでっ!!...いっ...くっ!!」
懇願するあたしの声に、一層強くそこをはじかれ、あたしは上り詰め、がくがくと膝を笑わせ崩れ落ちる。
その手前で支えられ、台所の流しに胸と手をついておしりを高く差し出す恰好をさせられる。
そこにあてがわれた熱いモノが、一気に奥まで突き立てられて、何度も激しく擦られる。いつも最初はそんなに長く攻められなくてすむんだけど、その分キツくって...イッタ後にこんなにされると...
「やぁあ!!!もう、...ああ、...っちゃう!!」
「サト...っく...でるっ!」
視界を真っ白にしたあたしは、台所の床に崩れ落ちた...

やだ、信じられない...
しばらくして、気がついたらベッドの上で再び責められていた。あたしが気がつくまで待てないのか?この男は...なんか、今夜はいつにもまして無言だし?
いつもならなんだかんだ意地悪なこと言ってくるのに。
「サト、寝てんじゃねえよ...感じてるんなら...声、出せよ。」
「はぁ...んっ、あっ...あっ...」
声なんてもうでない...さっき叫んじゃって声が掠れて...
「控え室でヤルの我慢してやったんだ...台所でも、続けてヤルの我慢してこっちに連れてきてやったんだ、さとりの好きなベッドの上だぞ、思う存分感じろよ...」
あたしが目覚めた途端それですか?
ホントいつだって、どこだろうがお構いなし...こんなことしておきながら嫁に行けって、ホントに涙が出るわよ。思われてないのに、それでも離れられないでいいなりになってるあたしが居る...揺らされて、感じさせられて、声を上げて、カレを求める。
「まさ..ひろぉ...ああっん、いっ、ああ...」
「いいのか?」
「はうっ..んっ、いいっのぉ...」
「俺が好きか?」
緩慢な動きで攻め立てられる。
「はんっ、好きっ...雅弘...好きっ...」
一方的に好きだって言わせられて...目の前であたしを攻め立てるカレに手を伸ばす。しがみつく...
綺麗だなぁ...天野さんって...真剣な顔、すごく、好き...
「ああああっ!!!」
「さとりっ……!」
あたしが何度も好きと繰り返すのを聞いて、満足げにあたしを追い込んでいくんだ。


面食いなんだろうな、あたしって。それにこんなえっちに慣れちゃったら次にはいけないよ。
だってえっちしてるときの天野さんって、やっぱり綺麗な顔してるし、色っぽいんだよね。おちゃらけてなんか居ない、キツイつり目が艶っぽくって、にやりと上げた口角がイジワルで...
あたしのことはお手軽に抱いてるんだろうけれども、えっちの間だけは、もしかしたらあたしって愛されてるのかも?って思うぐらい愛撫もしつこいし、動きも激しいもん。
3年半、この調子だから、あたし錯覚してるのかもしれない。
いい加減キリつけないとなぁ...あたしももう25だし。
隣で無防備に眠る少年の顔をしたおっさん(30になってるから、おっさん!)には全然、期待は出来ないし...
いつもそんなこと考えてるのに、なし崩しにえっちして、寝坊する天野さんをたたき起こして、機嫌の悪い罵声を山ほど浴びせられて、口答えでもしようもんなら朝からお構いなく鳴かされて...
結果、あたしの方がふらふらで仕事に出なきゃならなくなる、こんな関係...

いつか、捨てられる前に出て行きたいんだけれども、なぜか週刊誌にも見つからないし、きっかけがなかっただけ...

きっかけがあれば、きっと、別れられる。

それまで...天野さんが本気の女の子を捜してくるまでの間、家政婦代わりしていたらいい。
そのご褒美で、抱いてもらって...一瞬だけでも、幸せを感じていられればそれでいい...
だってあたしと天野さんの関係はただのセフレ、家政婦であって、未だ愛や恋が語られたことは。
きっと、このまま、誰に知られることもなく終わるんだろうなぁ。
だって、見せかけにすらならない関係なのだから...


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