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My Prince Your Princess 〜普段着の王子様〜

王子の指があたしを慈しむように、触れては離れて、離れては触れる。
ベッドに縫いつけられたあたしの頬を優しく撫でてキスを繰り返した後、王子の身体が重なって来た。重いような熱いような...
「なんか、手に入ったと思ったら、抱くのがもったいないな。」
「なんよ、それ...ふふふっ」
あたしは思わず笑ってしまった。緊張はしてるけど、抱きしめられてるその手でさらに溶ろかされていくのがわかる。
王子の信じられないぐらい甘い微笑みはさっきから一度もあたしからそらされない。
「ナツキ、って本名?」
「うん、漢字で夏の希望の希で夏希。」
「夏希...」
甘い声で呼ばれた後、唇が塞がれて、また何度も角度を変えながらあたしの中に入り込んでくる。その舌先に翻弄されながら、呼吸出来ないあたしは息苦しく何度も息継ぎをして、喘いだ。
「ん、やっぱりナツキなら平気や。」
「え?なにが?」
「ナツキが美味しいってことや。」
もっと食べるとか何とか言って、あたしのシャツのボタン外して、無い胸を晒そうとする。
「いやや、胸ないんやから...わかっとるくせに、見んといて!」
無いけど一応してるブラジャーを外しにかかるその器用な手。あたしは必死に胸を隠そうともがいた。
「前に触ったんは服の上からや。直に触るんは初めてやから...こら、逃げるな、」
「いややって、んっ、ひゃあぁ、そ、それ、やめてぇ...あんっ」
胸の先をころがされて、きゅっとつままれた。その小さな胸に王子の唇が吸い付いて、舌で嬲られ、最後に甘く噛まれる。
これって感じてるって事?胸って無くても感じちゃうんだ...
「やっぱりな、ナツキは感度ええな、この胸。」
「ヤダ、もう、それ以上、しないでっ!ああんっ」
おかしくなっていく...
狂わされるような痛みにも思えるほどの快感に思わず身体がよじれて...あれ?いつの間にか、ジーンズも無くなってる?
「ナツキ、目に涙まで溜めて、可愛いなぁ。」
「ふぇ?」
キスされながら、また胸に触れられて、反対の手がだんだん下に降りていく。
「やっ、そんなとこ...」
前みたいに散々敏感な突起を弄られ、覚えてたみたいに潤んでいくソコにゆっくりと王子の指が沈み込んだ。
「んんっ!!」
「ナツキの身体がオレを待っててくれてるみたいや...こんなに濡れてさ、オレがどんだけ嬉しいかわかってるか?」
「ん...え?な、なんで...?」
霞がかかりはじめた頭でその意味を考える。
「前はどれだけ感じても、ここまでオレが入り込むの許してくれんかったやろ?」
それは...だって触られるのすら初めてやったし、怖かったし。
「オレな、男も女も、こうやって肌あわすの、アカン時期あったんや。」
王子はちゅってキスして抱きしめると、そのままあたしのお腹の下まで潜っていった。膝を押し広げられ、ソコに王子の暖かな息がかかる。
「やっ!」
それだけで恥ずかしくて震えてしまいそうだった。
「こうやって指で触れたり、舐めたり...」
「ああ、やぁ...あっ、くぅ...!!」
王子の舌が何度も往復する。蕾をつついたり、あたしの中に入り思うとしたり、あたしはすっかりされるがままで、与えられる快感に逆上せあげっていて、差し込まれた指がとんでもなくオカしな所を擦り上げて、あたしは軽く昇り詰めたようだった。
「はあ、はあ...」
荒い息を吐くあたしの脚の付け根から顔を上げると腕で口元を拭う。
「こうゆうの、強制されて嫌で嫌でしょうがなかった。せやけど、こんなにもしたいって思えたんはナツキだけや。なんでやろな、ナツキが何も知らんからやろか?汚れてない、綺麗なナツキやから、だからこそ欲しいんや。なあ、もう止まられへん。全部もらっていいか?大事に、するから...」
目の前にまで戻ってきた王子は真剣な顔であたしを見ていた。
何だかよくわからない。とても大事なことを言われたような気がするけど、もう考える力も残っていなかった。
「ん、ええよ。晃一くんに全部あげる。あ、あたしでよかったら、全部...」
「ああ、もらう。けど、泣くなよな?たぶん啼かせるやろけど。」
「へ?」
またわからないことを言われて首をかしげた瞬間、鋭い痛みが下肢を貫いた。
「痛っ!!やっ、痛い!」
一気に入り込んだすごい圧迫感があたしを一杯にする。痛みと共にあたしの中を征服したそれはすごく違和感があって、ジンジンとしびれるような痛みが身体の奥に生まれた。
痛いし怖い...
だけど、あたしの中にいるのは紛れもなく王子で、その熱さを伝えてくるモノはあたしの身体に密着してる王子の身体から伝わってくる。暖かなその肌にしがみついて、あたしは声を上げるのを必死で堪えていた。
こんなに痛いとは思ってなかったけれども、こんなに幸せな気分になれるのも知らなかった。
「力抜いて、オレもたんようになるから、ナツキ?」
ちょっと辛そうな表情の王子が、あたしをじっと見つめてくれてるし、優しげなキスを何度も額や目尻に落としてくる。あまりに優しくて、あたしはゆっくりと力を抜こうとするけどうまくいかない。どうしていいかわからなくて、25にもなって情けないなぁって思うと余計泣けてくる。こんな泣き虫じゃないのに...
「ごめん、痛いやろけど、オレのこと嫌わんとって...」
泣きそうな顔で王子が言う。
「そ、んな...嫌いになんか、なれへん、晃一くんのこと、ごっつ好っきゃもん。」
あたしは思いっきり王子に抱きついた。その瞬間、な、なんか、ずんって、圧迫感が増した?
「ったく...ほんまに可愛いヤツやな。ナツキ、オレも、ナツキやったら、いや、ナツキや無いとあかん。」
ぎゅっと抱きしめられて、また押し上げられる?
(痛い...)
だけどあんまり痛がると王子に悪い気がしてあたしはその言葉を飲み込んだ。
「悪い、ナツキ、もう...」
何が悪いんだろうと考えていると、いきなりズキズキと痛むところを何度も突き上げられた。あたしは気を失いそうになるほどの痛みと、同時にわき起こる不思議な感覚に翻弄されながら身体を揺すられて、意識が飛びそうになる。
「晃一くん!こうっ...ううっ、くっうぅ...」
激しい奔流の中に放り出されたような気がしたその時、王子の両腕がしっかりとあたしを抱きしめて、身体の全てが王子に張り付いて隙間のないほど一つになった。
繋がった部分が脈打つように伝えていた。王子の熱い想いを...



「ごめん、無理させたな。」
「ううん。」
初めてで二回はキツイやろうからとか何とか言って、王子は笑ってたけど、あたしはもう何も考えられない状態でただ王子の胸に顔を埋める様にして息を整えていた。
あたしの部屋の狭いシングルベットに、最初の時のようにその身体を寄せ合ってる。違うのはどちらも一糸纏わぬ姿ってやつで、恥ずかしながら王子の全てがわかってしまう。
「オレな...潔癖性なん、わかる?」
王子の声が静かに語りはじめた。お互い穏やかな呼吸を取り戻してからのことだった。
「うん。」
神経質なとこあるって言うのはわかっていた。
「よっぽど仲良かったらなんぼ触れ合うても大丈夫やねんけど、そうやない人はあんまり苦手なんや。」
仕事は割り切れるようになったと王子は付け加えた。話ながら、あたしを抱きしめるその手がさわさわと肌の上を渡る。
「昔、ちょっとな、色々あって、オレも相方の剛史もボロボロになりかけたんや。何とか立ち直ったけど、オレはキスしたりして相手の唾液や体液を舐めたりすることも出来んようになってた。せやから、ナツキが思てるほど、オレ遊んでへんよ。いや、遊ばれへんかった。何もかもが気持ち悪うなるくらい拒否してたんや。けど...」
そっと王子の手があたしの頬を撫でる。
「ナツキはオレの中にすーっと入ってきた。許せるって思ったのは直感やったけど、何も知らんでおるナツキが可愛くて、誰の手にも渡したないって思ったから手を出したんやけど...まさか、こんなに全部平気やとは思わんかった。せやから、今オレがどれだけ嬉しいか、わかってるか?」
「よ、よくわかんない...」
正直な返事。だって、今迄って、色々あったって、経験のこと?どうやらソレはあたしの想像の範疇を越えてるらしく想像もつかないあたしは思わず頭をひねった。

あたしと、その...えっち出来たことを言ってるの?それとも、今まで出来なかったのが出来るようになったってこと?
「もう一回ぐらい頑張りたいとこやけど、初めてやのに無理さされへんわな。それにオレも眠いし...ナツキ、おやすみ。」
ちゅって瞼にキスを落とされ、素肌のまま王子の腕に閉じ込められた後、頭の上で軽い寝息が聞こえてきた。

王子に何かあったっていうのはわかった。それで悩んでいたんだろうけれども、あたしと出来てよかったみたいだけど、それって、好きとかそんなんじゃなく、出来そうだったから??
もしかして、それだけの理由なのかなぁ...
いいけどさ、普通だったらあたしなんかが王子にまともに相手されるわけないし、リハビリの相手だったとか言うのならわかる。色っぽい相手がだめなんだったらあたしみたいなのはちょうどよかったはず...それにあたしが何にも知らなかったから、だから...
王子にはじめてをあげられてすごく嬉しいのに、冷めていく自分の心が見えた。
見上げると長いまつげ、女の子にも見間違いそうなほどのきれいな寝顔が、あたしとは別世界の人に見える。
(王子様だもん。高望みはダメだよね?あたしは、どう見たってお姫様じゃないし...)
だけど、人って、心も身体も贅沢で我侭だ。
本当は本気で自分を思って欲しい。大事にするってって言ってくれたけど、出来ればそれだけじゃなく自分が必要だと思わせて欲しい。
そう思わせるこの腕の温もりが今は恨めしかった。
嫌な女にはなりたくはない。分不相応に王子にへばり付いて邪魔もしたくない。
それに...
あたしだって今の仕事を続けたいしもっともっと上を目指してみたいから...だから、ちゃんとどこかで線を引いておかないといけない。子供じゃないから、25にもなったいい大人だから、たとえコレが初めての恋でも、初めての経験でも、せめてかっこよく見せたかった。
大人の女ってヤツになりきりたかった...


次の約束をしなかったのは、お互い忙しいから、そう思いたかった。
だけど、王子からはなかなか連絡がこなかった。
自分から出来ないあたしは、ただ待つだけしか出来なかった。

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